Director: Brad Bird
Pixar animation Studio最新作、Ratatouille(ラタトゥーイ 邦題:レミーのおいしいレストラン)を見た。
高い前評判の通り、すばらしすぎる出来。
自分は今までのPixar作品ではMonsters Inc. がかなり好きなのだが、それ以降もThe Incredibles, Cars, (なぜかNemoはそんなに好きじゃない)と、相変わらずひっきりなしに面白い作品を作ってくるこのスタジオ、なんとなく、Nemo以降キャラクター性が薄いような気もするのだが、それは子供にとっての話で、ストーリーが抜群におもしろいので、まったく問題がない。
と、いうわけで、今回も大きくブチかましてくれた。
映像の方は、Monsters Incでは毛の表現、Finding Nemoでは水の表現、と、毎回新しい技術にトライし、みごとに映像の質の底上げに貢献しているPixarであるが、今回はもはや、アニメーションとして目指す新しい分野はこれ以上あるのか?という程の出来。
強いて言えば、今回は、光の透過性(Translucency)には相当こだわっていたのではないだろうか。
世の中には、金属などの光を反射するもの、逆に吸収するもの、そして、途中まで通し、なかで拡散してしてしまうもの、がある。
Translucencyとは、その途中で拡散させてしまうものの表現で、一般的にはCGでは特に再現が難しいといわれている。
しかし、今回なによりも驚くのは、CGであるはずの料理がうまそうに見えるところだ。天空の城ラピュタなんかの宮崎駿作品の食べ物も相当にうまそうであるが、それは、音や食べ方や感じる質感の「うまそう」であって、今回の「うまそう」は、単純に見た目、あたたかさや色(もちろん音もあるが)、うまいものを記号としてではなく、うまいものそのものを見せてくれる「うまそう」だ。
食べ物というのは一般的に、光を反射するわけでもなく、ツヤがまったくなければ、うまそうにはみえない。
つまり、CGで料理を(うまそうに)再現するというのは、かなりの苦労があったはずである。
特に自分が度肝を抜かれたのは、レミーが食べようかどうか躊躇するパンのかけらである。
これは、説明なしで是非注目しておいていただきたい。
それから、水にぬれたモノの表現も、かなりのものだ。
レミーの濡れた毛、川に落ちて濡れた服、濡れた本のページ・・・。
アニメーションの方も、ねずみの動きはきっと相当の研究がなされていると思う。あの軽快に、ペタペタとどこでもよじ登っていくレミーの動きには、リアルさだけではない、アニメーション独特の動きの気持ちよさが存分に入っていて、本当に楽しい。
総評として、僕としては、僕の中のリアルさの壁を少し越えてしまっていて、ストーリーとして、それは行き過ぎじゃないかー?と思ってしまうところもあるのだが、それはきっと個人差があるのではないかと思う。
だが、見終わっても、もう一回みたい!と思えるすばらしい作品。
anyone can cook!
追記:(ネタバレになりかねないので、見ていない人は読まない事!)
ストーリーについて、知り合いの方が、あれはpixarの挑戦でもある、と書いておられた。
anyone can cook と言っておいて、最後に料理評論家Egoに言わせたセリフがこれ
「In the past, I have made no secret of my disdain for Chef Gusteau’s famous motto: Anyone can cook. But I realize that only now do I truly understand what he meant. Not everyone can become a great artist, but a great artist can come from anywhere.」
(かつて私は、シェフGusteauのこの有名なモットー: 「誰だって料理はできる」 に軽蔑の念を隠す事はなかった。しかし、今になって初めて、彼が本当に言いたかった事が分かったのだ。それは、誰もが素晴らしいアーティストになれるわけではない、しかし、素晴らしいアーティストは、どこからでも生まれ得る可能性がある、という事だ。)
つまり、才能は、がんばれば全員が花開くのではなく、がんばってもダメな人はいる。(しかし、才能のあるものはどこから出てくるかわからない)
という、子供向け映画にあるまじきメッセージであるし、大人である自分でも少し痛いメッセージであったと。
はじめ、それは考えすぎじゃないかと思ったが、このセリフをきちんと読んでみて初めてそういう意味が含まれていると分かった。
正直、自分としては、そんなことわかってはいるので、あわてふためく程のことではないと思うのだが。